上蔵は花盛り

上蔵2019年4月23日

ぼくの住む上蔵集落を上から撮影した。
今年は桜の花のもちがよかったため、その後に咲き始める花桃の開花と重なって、集落中が花で溢れている。今が見ごろ。見に来てね!

リニア中央アルプストンネル、はじまって200mで崩落

「もともとここには阿寺断層帯が走っている。条件が悪い場所だとはわかっていた。慎重にやった結果がこれ。環境影響評価書やJR東海の説明では大丈夫と言われてきたのに、実際にはそうはなっていない」

阿寺断層帯の走る方向を指す坂本さん

 長野県南木曽町の町議会議員坂本満さんは、立ち入り禁止のロープが張られた竹やぶを見て呆れ顔だ。

4月8日、JR東海が建設中のリニア中央新幹線の建設現場の一つ、岐阜県中津川市山口でのトンネル掘削中に土砂崩落が生じた。現場は木曽川沿いの中津川市から天竜川沿いの長野県伊那谷へと至る中央アルプストンネル23・3kmの岐阜県側の工事個所だ。

山口工区の掘削現場

坂本さんの住む南木曽町も、ここから延びる中央アルプストンネルが通過し、町内でも掘削工事が今後始まる予定だ。山口地区からは昨年11月から先行して掘削が始まった。完成すればリニア新幹線が通る本坑へと至る斜坑の掘削中に、入口から200m付近で崩落が起きた。

 この部分の建設をJR東海から受託亥する鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)によれば、8日午前7時ごろに作業員が直径8m、深さ5mほどの陥没を確認。4日に斜坑内で小崩落が発生したため、斜坑内の復旧作業中だったとしている。

 翌日の9日に坂本さんとともに現場に行くと、崩落個所のある竹やぶは、人家や田んぼが散在する道路脇にある。

左の竹やぶ内で崩落が生じた

崩落周辺では数人の作業員とミキサー車が立ち働いていた。現場の作業員の一人は、「トンネルから地上部までは20m弱。トンネル掘削では発破(火薬による爆破)も行っていた」と語った。鉄道・運輸機構は、「工事を止めて原因を調査中であり、復旧計画を検討中。崩落個所にはモルタルの打設工事を行っている」と現状を説明した。

「本坑トンネルはあの家の真下を通ります」

道を挟んで崩落個所のある竹やぶと反対側の人家を坂本さんが指した。今後も同様の事態が起きれば、次は竹やぶですまないかもしれない。近くを流れる前野沢では、作業員の一人が水位をじっと見守っていた。鉄道・運輸機構によれば、「水枯れなど周囲への影響は今のところ生じていない」という。

2027年の東京(品川)―名古屋間の開業を目指すリニア新幹線の路線286kmのうち八割は地下を通る。各地で関連工事も含めてトンネル工事が始まっている。しかし、すでに長野県では、大量の工事車両の通行のための道路改修工事のトンネル掘削中に、地表部で2017年12月、発破の振動によって崩落が生じた。また、名古屋市の名城非常口では、掘削作業中に地下水がわき出たため、昨年12月から工事が中断。作業は今秋に再開予定だ。

情報の公開の仕方も不透明だ。大鹿村では崩落で道路が通行止めになり、住民が2週間不便を強いられた。この事故原因について、筆者が長野県に情報公開請求すると、事前にトンネル内部で施工業者がクラックを認めていながら、工事の納期が迫った中、まさに崩落した個所の真下で火薬の量を倍にしていたことがわかった。このことを指摘する施工業者のレポートを、長野県は専門家による委員会で「特殊な地盤で予測が難しかった」とするJR東海の検討結果が了承を得るまで公表しなかった。

名古屋駅の非常口の地下水湧出がニュースになったのは4か月後だ。今回の崩落でも、8日に公表されるまで、4日の崩落発生から4日経っている。

「施工業者からすれば掘削の初期段階で崩落が起きたからまだよかったかもしれません。今後の工事はより慎重にはなるでしょう。でもこれじゃ泥縄。現場はたいへんでしょう」

建設現場での地質調査の仕事の経験もある坂本さんが首を振る。そして付け加えた。

「リニアによる地域活性化が語られがちですが、自然に対する謙虚さが本来建設工事には必要なのに、それがリニアには決定的に足りていない」

大鹿村の選挙、新規参入阻む個別訪問禁止の怪

「選挙中に個別訪問がされていましたよ」

 筆者は2016年の秋から長野県大鹿村に住む。引っ越してきた年の冬、村が工事現場になるリニア中央新幹線の是非が争点になったこともあり、村長選挙が行なわれた。当時東京から越してきたばかりの筆者は、そのとき気づいたことを翌年の行政懇談会で手を挙げて発言した。その選挙で当選した村長と、当時選挙管理委員会の担当の元総務課長が並んで座っていた。

「ぼくは有権者が直接政策を知って深められる個別訪問はいいことだと思うんです。だけど公職選挙法では禁止されている。ルールを守った側が不利になるような状況はフェアじゃない。状況を打開するため、村が公職選挙法を改正する意見書を国に出したらどうでしょう」

 村の集会所でぼくがした提案に、ひな壇の村の三役は、ばつが悪い表情でしどろもどろになっていた。

 各地で地方議会議員のなり手不足が深刻な問題になっている。今回の統一地方選でも、長野県内の自治体では選挙にならなかった自治体が散見できた。そんな中、ここ大鹿村は1000人の自治体ながら、議員選挙は毎回成立している。今回も8人の定員に対して9人が立候補して5日間の選挙戦をたたかった。

 さぞや賑やかになるのかと思いきや、選挙期間中、村内で一度も街頭演説を見ていない。2週間前の長野県議会選挙のときには村内を走っていた選挙カーも、村議会選では1台も見なかった。選挙掲示板には候補者のポスターが貼られているが、名前だけを大書した「質素」なものもある。にもかかわらず、先日の県議会議員選挙の投票率は79%で、同じ選挙区の他の自治体の中で一番高い。いったいどうやって選挙をしているのか謎だ。

 村の選挙管理委員会は、投票日には数時間おきに、自治会ごとに置かれた投票所の投票数と投票率を発表して投票を促すし、選挙ごとに候補者による合同の立会演説会が公民館で開かれている。行政や候補者が以前から選挙への関心を高めようとしてきたこういった努力が、選挙への関心を高めているのはあるだろう。

合同立会演説会

一方で、候補者や各陣営のスタッフが個別訪問を行なっている場面が、村内の道路を車で走らせていると否応なく目に入ってくる。

「法律では禁止されているけど、村では個別訪問は普通に行われてきた」

 村で生まれ育った男性(60代)は、先の村長選挙で個別訪問に気づいたぼくが尋ねると、そう説明した。ずっと慣例化してきたため、誰も選挙違反について指摘しないというのが実情らしい。先の男性も、今回の選挙期間中、個別訪問にやってきた数人の候補者の名前を挙げた。

 しかしもちろん、候補者に対する事前の説明会では、個別訪問が禁止であることくらいは説明するはずだし、実際に先の懇談会で質問した際、前総務課長は「公職選挙法では違法」と、これは明確に答えていた。買収などの温床になるから規制されてきたのだろうか。

「個別訪問の禁止は本来新規参入を阻むためです」

地方自治に詳しい高知大学の岡田健一郎准教授(憲法学)はそう言って首を振る。

「個別訪問禁止の歴史は古い。もともと大正デモクラシーのときに男子普通選挙(1925年)が行われたときに遡ります。それまでは候補者も有権者も高額納税者だったのが、男性だったら誰でも投票できると規制緩和された。そうなると無産政党が伸びかねない。お金のない人の選挙手段は演説やビラ、個別訪問。自由だった選挙に規制が設けられていきます」

 新人候補ほど摘発されないようルールに敏感なはずだが、ルールを守ると落選しかねないというジレンマに陥る。

「戦後初期の選挙は規制が緩和されました。しかし、もともと基盤のある既成政党は、保守革新問わず個別訪問をしなくても勝てる。規制には反対してきませんでした。結果、共産党が摘発され裁判になっていますが、最高裁は『不正の温床になる』と合憲判断をしています」

 これでは原因と結果が逆だ。最近、SNSの利用などからなし崩し的に規制が緩和され、今回の統一地方選から都道府県と市区議会議員選挙でのビラ配布がおこなわれている。

「いい傾向だと思います。もともと個別訪問の禁止は他国ではなく、憲法21条の表現の自由に抵触して違憲だというのが、憲法学者の中では主流の意見です」

 岡田さんも最近の規制緩和を歓迎する。

大鹿村では議員報酬は10万円だ。候補者にしてみれば、選挙カーや拡声器などに投資するのは費用対効果の面から割に合いそうにない。勢い、個別訪問は重要な手段ということになる。それで高投票率や候補者不足の解消になるのなら、大鹿村の選挙は「周回遅れのトップランナー」だと言えるかもしれない。

もっとも、それで当選した議員は「法令順守」とは言えないだろうけど。


「絶滅野生動物」生息記6

雑誌Fielderの新刊で連載「絶滅野生動物生息記」が掲載されています。

今号はニホンカワウソが生息するとされてきた本州産でありながら、ユーラシアカワウソと近縁の遺伝子を持つとされた、神奈川県のカワウソについて実態に迫ります。合わせて、昨年話題になった、栃木県那須町のカワウソの正体についてもルポしました。

リニア説明会を開け JR東海の録画禁止に抗議

JR東海古谷部長

 2012年にリニア新幹線の工事現場予定地の南アルプス山麓、大鹿村を訪問した。度々登山の雑誌で進行状況を紹介したが、数年の間、リニア新幹線について継続的に取り組むジャーナリストは、ぼくともう一人しかいなかった。

 あれよあれよという間に環境影響評価の手続きがすみ、2014年には国土交通省は着工を認可し、2027年の開業予定で工事が始まった。総工費は東京(品川)―名古屋間だけで5・5兆円。今世論を分断している辺野古の埋め立ての当初費用が2400億円だからその約30倍だと言えば、その規模と影響の大きさが想像できるだろうか。

もちろんゼネコン不正に至るまで、リニアの問題が世間に伝わらなかったのには、ぼくたちの努力不足という以外に仕掛けもある。建設主体のJR東海は、アセスの過程で一カ所につき最低3回程度の説明会を沿線各地で行っている。その後も着工前に工事説明会を開催する。杜撰な計画で当初なかった工事の変更がなされても、実際はアセスの説明会はなく、都心部の予定地では地下40m以上の大深度のため、上に家があっても説明はない。

 しかもこの説明会の仕方がひどい。

質問は3問までに制限し一度に行なう、再質問は許さない、決められた時間が来れば手を挙げている人がいても説明会を終える、借り受けた公共施設の入口に禁止事項を列挙した紙を貼り出す、関係者以外は出席させず住民が呼んだ人であっても会場に入れない、メディア以外の住民による撮影をさせない、わずか数枚の配布資料よりはるかに多い数十枚の画像が説明時に投影され、メモ代わりの画像の撮影すら禁止する……大鹿村の住民になって頭に来るのが、会場に行かないと説明すらしないことだ。住民なのに情報の入手も制限付き。中部電力はアセスの資料を各戸配布するが、JR東海にやる気はない。

 こういった「情報統制」に対して、メディアの録画は冒頭のみ。各自治体の連絡協議会などはメディアには非公開なところが多い。それで住民が疑問をぶつけたり、場が荒れたりしても、終了後にJR東海の部長がメディアの囲み取材に、「理解が深まった」と回答して工事が進む。言っても聞いてもらえないし、言ったところでメディアは伝えない、となって住民の孤立感は大きく、しんどさは解消されない。

 その上、リニアの実情を記者として伝えると、「ご説明」と称してJR東海の広報が雑誌の編集部に押しかけ、「一方的」と何度でも編集部とのやり取りを求める。値を上げて雑誌がリニア問題を取りあげなくなる。こうやって原発同様「安全神話」が維持されてきた。しかし、大手の記者たちに「報道の自由」を守ろうとする緊張感はない。住民が会場で「そもそもリニアは必要なのか」と問うと、「それをここで聞かないでください」とJRの担当者が答える。しかし、そんな問いはどこでも議論されてこなかった。国家的なプロジェクトである以上、地域の問題を地域だけが背負うのは荷が重い。

 そんなわけで、住民団体個人、それにジャーナリストに呼びかけて、1月の大鹿村での説明会を前に緊急に呼びかけ、共同声明として発表し、関係自治体や記者クラブに申し入れた。最終的に34団体、63個人が賛同してくれた。大鹿村の説明会では、住民としてぼくが公開の仕方に冒頭異議を唱え、フリーランスの記者を中心に、いっしょに抗議してくれた。

こういった措置を大鹿村もJR東海も、「出席者の自由な発言を妨げるため」という理由で正当化している。そこで取材を控える時間枠やコーナーを用意したり、発言者が録画の諾否を発言できることを司会が冒頭アナウンスしたりするよう事前に主催者に提案したが、村もJRも拒否した。もともとそれが目的ではないからだ。そもそも冒頭録画しているので途中の録画を禁じても意味がない。実際、静岡の専門家による委員会は、静岡県の措置で全部公開している。こういったやり取りが公開でなされたこと自体、反撃の意味があった。

 とはいえ、当日録画禁止の措置を解除できたわけではない。それでも今回の取り組みで得られた賛同の輪は価値がある。住民もジャーナリストもどちらも、問題を広く知ってもらい、多くの人を議論に引きずり込む意志がなければ、現状は打破できないからだ。説明会は今後もあるだろう。より多くの人の賛同を得られるようこの取り組みを持続したい。(宗像充、大鹿の十年先を変える会)

(反天皇制運動Alert34、2014.4.9)

Nらじに出演

写真は 特集聴き逃し から

昨日はNHK第1のNらじの出演で渋谷のNHKまで行った。今回は法務省が共同親権について検討する、という発言を受けて、共同親権について取り上げたいということで連絡があった。

いろいろ事前に打ち合わせて、生放送のため渋谷にGO!

ところが、大鹿村は一昨日から村に通じる川沿いの道路が落石のため通行止め。しかたなく分杭峠を越えて駒ケ根からバスに乗る。バスの時間に間に合わないかも、とかなり飛ばす。追い越した方、すいません。

スタジオに入る前に、上野さんとディレクターと打ち合わせる。議論を促す番組なので、共同親権についての疑問も聞くことになります、ということでした。

うちにはテレビがなく、山奥なので電波も入りにくく、そのためNHKのラジオは外界からの数少ない情報源で、Nらじも聞いていた。声しか聴いたことない人が前に座っていて、「ぼくも子どもに会えなかったんです」と言ったときに、目の前に座っていた黒崎さんの驚き顔が忘れられない。

番組では言い足りない部分も、余計だったかなと思う部分もいろいろあったけど、先日の朝日放送も含め、とにかく共同親権が正面から議論されるようになったのは歓迎。

言い足りなかったのは、子どもと配偶者が住所不明になって、DVと申し立てられている、というときの事情。

これは「DVだから仕方がない」ということではない。というのも、申し立てがなされれば緊急措置で住所秘匿がなされるけど、この措置は相談履歴で発動され、撤回が事実上できない。だから、実際にその方がDVかどうかということとは直結しないのだ。

よく「DV男は自分の加害行為がわかってない」と共同親権や面会交流に反発することがある。だけど、手続きをすっ飛ばして他人の権利を損なっていい、ということを主観だけで正当化することはできない。この辺のまともな議論はそろそろ公の場でしていかないとならない。

またもめ続けている夫婦が共同親権でほんとにできるのか、という質問もあって、これはこれで当然の質問。

制度の問題としてぼくも上野さんも答えたが、結局、どんな制度であっても、多様な家族のあり方を認める支援がなければ機能しない。これは根本的には親権の有無とは実は関係ない。ぼくも非婚の父なので、親権はなかったが、別に親権が欲しくて発言してきたわけではない。親としてまともな扱いをしてほしい、差別はしんどい、と言ってきただけだ、

法的にも、実際の手助け、という面でも、子どもから見たら離婚は家が二つになること、その事実を踏まえた社会づくりに踏み出すかどうかの私たちの選択ではないでしょうか、というのが正解だったかもしれないね。

家庭裁判所前の殺人~分離強化は再発防止につながるか

「やったことに対しての責任は取らないとならない。しかしもともと妻を殺した男性が危険な存在だったのか」

 離婚や別居に伴い、別居親子が定期的に過ごす面会交流事件を多く手がける、土井浩之弁護士(仙台弁護士会)は嘆息する。3月20日に東京家庭裁判所前で31歳の女性が切りつけられ、離婚調停中のアメリカ人の夫が逮捕された。その後女性は失血死している。

 ライターである筆者は、子どもと引き離された経験のある別居親である。夫婦間で妻の側が被害者の事件報道もウォッチしてきたが、こういう場合、まず夫の人格の異常性が強調されることが多い。今回も、男性がDVだったということを前提に、「命がけで救いを求めて訪れる被害者たちを裁判所は守れているのか」と警備強化や保護命令制度の活用を唱えて、分離政策を後押しする論調が出ている。しかし本当にそれで暴力が防止されるのだろうか。

「殺したのは究極のDVですが、過去彼がDVだったという根拠があったのでしょうか。妻を殺した男性のものと思われるSNSには、昨年の8月に妻子がいなくなって一週間、何が起きたかわからない状況だったことがわかる書きこみがあります。誘拐されたと大使館に相談もしている。自分が置かれた状況がわかっていたのでしょうか」

 妻は同時期、「夫が精神的に不安定」と警察に相談していたとされる。一方で、夫のSNSには、子どもが生まれてから妻が「メンタルヘルス」に問題を抱えていたという書込みがある。

土井さんは「産後など、不安を抱えた女性が行政の女性相談窓口などに相談に行くと、『夫の精神的虐待が原因』『命を守るために逃げなければならない』とアドバイスをすることになる」と解説する。「DVの相談件数が増加するのと歩調を合わせて家庭裁判所への面会交流の申立件数も増加しています。行政のマニュアル的な対応が面会交流の事件数増にかなり影響を与えている。行政の引き離し政策で男性な危険な状態に追い込まれたのが事件の背景」というのだ。

「孤立して不安定になっているのに、本人に状況を冷静に伝えるサポートはない。男性の側の話を聞いて自身の気持ちを消化し、相手の気持ちも考えることが本質的にできにくい体制になっています」

 そう男性の置かれた状況を説明するのは、加害・被害、男女を問わず、家族の再統合や脱暴力の家族支援を行う日本家族再生センター代表の味沢道明さんだ。どこの国でも同様の事件は起こりえるものの、暴力防止の観点から日本の現状に首を傾げる。

今回事件が起きたのは家庭裁判所の手荷物検査の前だ。セキュリティー体制を強化すれば事件は防げたのだろうか。

「今回は日時がわかって家庭裁判所の前で待ち構えていたんでしょうが、別の場所に妻が現れるとわかっていたらそこで事件が起きたかもしれない。居場所だって本気で探そうとしたら見つけられる。分離すればすむという問題ではない」

 味沢さんは首を振る。2013年に東京家庭裁判所に手荷物検査が導入された際、筆者は東京家裁に直接理由を聞いている。東京地裁など、すでに手荷物検査が導入された施設との間に地下通路ができて、東京家裁の入り口にも取り入れたというのが導入の理由だ。夫婦間暴力の防止の強化が目的だったわけではない。本質は別のところにあると味沢さんも強調する。

「日本のDV対策は民事対応です。刑事介入がなされて双方の事情を聞かれるアメリカなどと違って、加害者とされた側は、いきなり妻子がいなくなって行方不明になり、家庭裁判所から調停の呼び出し状が届くことになる。周囲もDVの加害者とされているわけだから引きますよね」(味沢さん)。ますます置き去りにされた側は孤立を深める。

「そもそも家庭裁判所では親権は子どもを確保している側に行く」。批判は家庭裁判所の姿勢にも向けられる。「調停でもなかなか子どもと会えず、離婚など目的を達するために子どもを取引材料にすることもある。そうなると感情を逆なでして、むしろ暴力のリスクは高まる」(同)。

女性保護にだけ目を向け分離を強化することが、むしろ暴力を誘発するというのだ。

「男性や引き離しに遭った側、それにDV当事者への脱暴力支援がない。そういった問題に取り組むコミュニティーにそういった人たちを引っ張り込むのが必要」(同)。

男女双方に目を向けた制度の構築と支援が抜きに、事件の教訓を生かすことは難しい。


4月の松川町(長野県)別居親交流会

【日時】 2019年4月19日(金)*毎月第三金曜日
19:00~21:00
【場所】 長野県松川町社会福祉協議会相談室
長野県下伊那郡松川町元大島2965-1
http://matsukawa-shakyo.net/info.html
参加費無料 直接会場にお越し下さい

お子さんに急に会えなくなってどうしていいかわからない方
周りに自身のことを話す方がいない方
裁判所やパートナー、元パートナーとのやりとりにお悩みの方

子どもと離れて暮らす親が
互いに気持ちや事情を話して 支え合い、
知恵を出し合う場です
会員でなくても参加できます。
主催 連絡先 0265-39-2116(担当・宗像)
munakata@kyodosinken.com

4月のくにたち別居親交流会

日時 2019年4月14日(日) 
午前9:30~11:30
*毎月第2日曜日
場所 国立市公民館集会室
東京都国立市中1-15-1
(JR中央線 国立駅 南口下車 富士見通り方面に徒歩約5分)
http://www.city.kunitachi.tokyo.jp/soshiki/Dept08/Div05/gyomu/shisetsu/0058/1463551605248.html
資料代 500円 直接会場にお越し下さい
主催 連絡先 0265-39-2116(担当・宗像)
munakata@kyodosinken.com