雑誌Fielderの新刊で連載「絶滅野生動物生息記」が掲載されています。
今号はニホンカワウソが生息するとされてきた本州産でありながら、ユーラシアカワウソと近縁の遺伝子を持つとされた、神奈川県のカワウソについて実態に迫ります。合わせて、昨年話題になった、栃木県那須町のカワウソの正体についてもルポしました。
ライター宗像充のサイト
雑誌Fielderの新刊で連載「絶滅野生動物生息記」が掲載されています。
今号はニホンカワウソが生息するとされてきた本州産でありながら、ユーラシアカワウソと近縁の遺伝子を持つとされた、神奈川県のカワウソについて実態に迫ります。合わせて、昨年話題になった、栃木県那須町のカワウソの正体についてもルポしました。
2012年にリニア新幹線の工事現場予定地の南アルプス山麓、大鹿村を訪問した。度々登山の雑誌で進行状況を紹介したが、数年の間、リニア新幹線について継続的に取り組むジャーナリストは、ぼくともう一人しかいなかった。
あれよあれよという間に環境影響評価の手続きがすみ、2014年には国土交通省は着工を認可し、2027年の開業予定で工事が始まった。総工費は東京(品川)―名古屋間だけで5・5兆円。今世論を分断している辺野古の埋め立ての当初費用が2400億円だからその約30倍だと言えば、その規模と影響の大きさが想像できるだろうか。
もちろんゼネコン不正に至るまで、リニアの問題が世間に伝わらなかったのには、ぼくたちの努力不足という以外に仕掛けもある。建設主体のJR東海は、アセスの過程で一カ所につき最低3回程度の説明会を沿線各地で行っている。その後も着工前に工事説明会を開催する。杜撰な計画で当初なかった工事の変更がなされても、実際はアセスの説明会はなく、都心部の予定地では地下40m以上の大深度のため、上に家があっても説明はない。
しかもこの説明会の仕方がひどい。
質問は3問までに制限し一度に行なう、再質問は許さない、決められた時間が来れば手を挙げている人がいても説明会を終える、借り受けた公共施設の入口に禁止事項を列挙した紙を貼り出す、関係者以外は出席させず住民が呼んだ人であっても会場に入れない、メディア以外の住民による撮影をさせない、わずか数枚の配布資料よりはるかに多い数十枚の画像が説明時に投影され、メモ代わりの画像の撮影すら禁止する……大鹿村の住民になって頭に来るのが、会場に行かないと説明すらしないことだ。住民なのに情報の入手も制限付き。中部電力はアセスの資料を各戸配布するが、JR東海にやる気はない。
こういった「情報統制」に対して、メディアの録画は冒頭のみ。各自治体の連絡協議会などはメディアには非公開なところが多い。それで住民が疑問をぶつけたり、場が荒れたりしても、終了後にJR東海の部長がメディアの囲み取材に、「理解が深まった」と回答して工事が進む。言っても聞いてもらえないし、言ったところでメディアは伝えない、となって住民の孤立感は大きく、しんどさは解消されない。
その上、リニアの実情を記者として伝えると、「ご説明」と称してJR東海の広報が雑誌の編集部に押しかけ、「一方的」と何度でも編集部とのやり取りを求める。値を上げて雑誌がリニア問題を取りあげなくなる。こうやって原発同様「安全神話」が維持されてきた。しかし、大手の記者たちに「報道の自由」を守ろうとする緊張感はない。住民が会場で「そもそもリニアは必要なのか」と問うと、「それをここで聞かないでください」とJRの担当者が答える。しかし、そんな問いはどこでも議論されてこなかった。国家的なプロジェクトである以上、地域の問題を地域だけが背負うのは荷が重い。
そんなわけで、住民団体個人、それにジャーナリストに呼びかけて、1月の大鹿村での説明会を前に緊急に呼びかけ、共同声明として発表し、関係自治体や記者クラブに申し入れた。最終的に34団体、63個人が賛同してくれた。大鹿村の説明会では、住民としてぼくが公開の仕方に冒頭異議を唱え、フリーランスの記者を中心に、いっしょに抗議してくれた。
こういった措置を大鹿村もJR東海も、「出席者の自由な発言を妨げるため」という理由で正当化している。そこで取材を控える時間枠やコーナーを用意したり、発言者が録画の諾否を発言できることを司会が冒頭アナウンスしたりするよう事前に主催者に提案したが、村もJRも拒否した。もともとそれが目的ではないからだ。そもそも冒頭録画しているので途中の録画を禁じても意味がない。実際、静岡の専門家による委員会は、静岡県の措置で全部公開している。こういったやり取りが公開でなされたこと自体、反撃の意味があった。
とはいえ、当日録画禁止の措置を解除できたわけではない。それでも今回の取り組みで得られた賛同の輪は価値がある。住民もジャーナリストもどちらも、問題を広く知ってもらい、多くの人を議論に引きずり込む意志がなければ、現状は打破できないからだ。説明会は今後もあるだろう。より多くの人の賛同を得られるようこの取り組みを持続したい。(宗像充、大鹿の十年先を変える会)
(反天皇制運動Alert34、2014.4.9)
昨日はNHK第1のNらじの出演で渋谷のNHKまで行った。今回は法務省が共同親権について検討する、という発言を受けて、共同親権について取り上げたいということで連絡があった。
いろいろ事前に打ち合わせて、生放送のため渋谷にGO!
ところが、大鹿村は一昨日から村に通じる川沿いの道路が落石のため通行止め。しかたなく分杭峠を越えて駒ケ根からバスに乗る。バスの時間に間に合わないかも、とかなり飛ばす。追い越した方、すいません。
スタジオに入る前に、上野さんとディレクターと打ち合わせる。議論を促す番組なので、共同親権についての疑問も聞くことになります、ということでした。
うちにはテレビがなく、山奥なので電波も入りにくく、そのためNHKのラジオは外界からの数少ない情報源で、Nらじも聞いていた。声しか聴いたことない人が前に座っていて、「ぼくも子どもに会えなかったんです」と言ったときに、目の前に座っていた黒崎さんの驚き顔が忘れられない。
番組では言い足りない部分も、余計だったかなと思う部分もいろいろあったけど、先日の朝日放送も含め、とにかく共同親権が正面から議論されるようになったのは歓迎。
言い足りなかったのは、子どもと配偶者が住所不明になって、DVと申し立てられている、というときの事情。
これは「DVだから仕方がない」ということではない。というのも、申し立てがなされれば緊急措置で住所秘匿がなされるけど、この措置は相談履歴で発動され、撤回が事実上できない。だから、実際にその方がDVかどうかということとは直結しないのだ。
よく「DV男は自分の加害行為がわかってない」と共同親権や面会交流に反発することがある。だけど、手続きをすっ飛ばして他人の権利を損なっていい、ということを主観だけで正当化することはできない。この辺のまともな議論はそろそろ公の場でしていかないとならない。
またもめ続けている夫婦が共同親権でほんとにできるのか、という質問もあって、これはこれで当然の質問。
制度の問題としてぼくも上野さんも答えたが、結局、どんな制度であっても、多様な家族のあり方を認める支援がなければ機能しない。これは根本的には親権の有無とは実は関係ない。ぼくも非婚の父なので、親権はなかったが、別に親権が欲しくて発言してきたわけではない。親としてまともな扱いをしてほしい、差別はしんどい、と言ってきただけだ、
法的にも、実際の手助け、という面でも、子どもから見たら離婚は家が二つになること、その事実を踏まえた社会づくりに踏み出すかどうかの私たちの選択ではないでしょうか、というのが正解だったかもしれないね。
4月18日午後6時のNHKラジオ第一のNラジ
https://www4.nhk.or.jp/nradi/
特集一本勝負(6時19分~)で共同親権についての番組が放送されます。
宗像も出演しますので、よろしく。
「やったことに対しての責任は取らないとならない。しかしもともと妻を殺した男性が危険な存在だったのか」
離婚や別居に伴い、別居親子が定期的に過ごす面会交流事件を多く手がける、土井浩之弁護士(仙台弁護士会)は嘆息する。3月20日に東京家庭裁判所前で31歳の女性が切りつけられ、離婚調停中のアメリカ人の夫が逮捕された。その後女性は失血死している。
ライターである筆者は、子どもと引き離された経験のある別居親である。夫婦間で妻の側が被害者の事件報道もウォッチしてきたが、こういう場合、まず夫の人格の異常性が強調されることが多い。今回も、男性がDVだったということを前提に、「命がけで救いを求めて訪れる被害者たちを裁判所は守れているのか」と警備強化や保護命令制度の活用を唱えて、分離政策を後押しする論調が出ている。しかし本当にそれで暴力が防止されるのだろうか。
「殺したのは究極のDVですが、過去彼がDVだったという根拠があったのでしょうか。妻を殺した男性のものと思われるSNSには、昨年の8月に妻子がいなくなって一週間、何が起きたかわからない状況だったことがわかる書きこみがあります。誘拐されたと大使館に相談もしている。自分が置かれた状況がわかっていたのでしょうか」
妻は同時期、「夫が精神的に不安定」と警察に相談していたとされる。一方で、夫のSNSには、子どもが生まれてから妻が「メンタルヘルス」に問題を抱えていたという書込みがある。
土井さんは「産後など、不安を抱えた女性が行政の女性相談窓口などに相談に行くと、『夫の精神的虐待が原因』『命を守るために逃げなければならない』とアドバイスをすることになる」と解説する。「DVの相談件数が増加するのと歩調を合わせて家庭裁判所への面会交流の申立件数も増加しています。行政のマニュアル的な対応が面会交流の事件数増にかなり影響を与えている。行政の引き離し政策で男性な危険な状態に追い込まれたのが事件の背景」というのだ。
「孤立して不安定になっているのに、本人に状況を冷静に伝えるサポートはない。男性の側の話を聞いて自身の気持ちを消化し、相手の気持ちも考えることが本質的にできにくい体制になっています」
そう男性の置かれた状況を説明するのは、加害・被害、男女を問わず、家族の再統合や脱暴力の家族支援を行う日本家族再生センター代表の味沢道明さんだ。どこの国でも同様の事件は起こりえるものの、暴力防止の観点から日本の現状に首を傾げる。
今回事件が起きたのは家庭裁判所の手荷物検査の前だ。セキュリティー体制を強化すれば事件は防げたのだろうか。
「今回は日時がわかって家庭裁判所の前で待ち構えていたんでしょうが、別の場所に妻が現れるとわかっていたらそこで事件が起きたかもしれない。居場所だって本気で探そうとしたら見つけられる。分離すればすむという問題ではない」
味沢さんは首を振る。2013年に東京家庭裁判所に手荷物検査が導入された際、筆者は東京家裁に直接理由を聞いている。東京地裁など、すでに手荷物検査が導入された施設との間に地下通路ができて、東京家裁の入り口にも取り入れたというのが導入の理由だ。夫婦間暴力の防止の強化が目的だったわけではない。本質は別のところにあると味沢さんも強調する。
「日本のDV対策は民事対応です。刑事介入がなされて双方の事情を聞かれるアメリカなどと違って、加害者とされた側は、いきなり妻子がいなくなって行方不明になり、家庭裁判所から調停の呼び出し状が届くことになる。周囲もDVの加害者とされているわけだから引きますよね」(味沢さん)。ますます置き去りにされた側は孤立を深める。
「そもそも家庭裁判所では親権は子どもを確保している側に行く」。批判は家庭裁判所の姿勢にも向けられる。「調停でもなかなか子どもと会えず、離婚など目的を達するために子どもを取引材料にすることもある。そうなると感情を逆なでして、むしろ暴力のリスクは高まる」(同)。
女性保護にだけ目を向け分離を強化することが、むしろ暴力を誘発するというのだ。
「男性や引き離しに遭った側、それにDV当事者への脱暴力支援がない。そういった問題に取り組むコミュニティーにそういった人たちを引っ張り込むのが必要」(同)。
男女双方に目を向けた制度の構築と支援が抜きに、事件の教訓を生かすことは難しい。
【日時】 2019年4月19日(金)*毎月第三金曜日
19:00~21:00
【場所】 長野県松川町社会福祉協議会相談室
長野県下伊那郡松川町元大島2965-1
http://matsukawa-shakyo.net/info.html
参加費無料 直接会場にお越し下さい
お子さんに急に会えなくなってどうしていいかわからない方
周りに自身のことを話す方がいない方
裁判所やパートナー、元パートナーとのやりとりにお悩みの方
子どもと離れて暮らす親が
互いに気持ちや事情を話して 支え合い、
知恵を出し合う場です
会員でなくても参加できます。
主催 連絡先 0265-39-2116(担当・宗像)
munakata@kyodosinken.com
日時 2019年4月14日(日)
午前9:30~11:30
*毎月第2日曜日
場所 国立市公民館集会室
東京都国立市中1-15-1
(JR中央線 国立駅 南口下車 富士見通り方面に徒歩約5分)
http://www.city.kunitachi.tokyo.jp/soshiki/Dept08/Div05/gyomu/shisetsu/0058/1463551605248.html
資料代 500円 直接会場にお越し下さい
主催 連絡先 0265-39-2116(担当・宗像)
munakata@kyodosinken.com
個人ホームページをオープンしました。よろしくお願いします。
「平等よりも伝統」
「お金を稼ぐことは伝統的に男性の役割でした。婚姻費用や養育費についても、女性が男性に求めてきた。男性が養育権を主張し女性に経済負担を求めることに反発する心情の背景にあるのは、実は平等よりも伝統」と批判するのは「男性差別」に関する研究書を日本に翻訳・紹介する久米泰介さん。「平等を求めてきた女性たちが、親権の問題になると途端に男女平等は無理という。子育ては伝統的に女性が強い。そういう領域に限って保守的になるのはご都合主義」と手厳しい。
「Men Too」
対して久米さんは自身を「マスキュリスト」と呼ぶ。「フェミニズムの理論を男性の側に適用し、伝統的な性役割の維持を男性の側から批判する運動」をマスキュリズムという。久米さんは「Me Too」ならぬ「Men Too」を強調する。「女性の被害を救って意図的に男性の性被害を受け入れない。男の性被害も訴えられるようにすべき」だというのだ。逆に、痴漢やDVで冤罪が起きる背景について、「合理性は男の価値感で女の感情を無視しているとフェミニストは推定無罪の原則を無視する。ところが、相手が男だと人権として扱わないのはおかしい」と憤る。
久米さんが2014年にアメリカから日本に紹介した『男性権力の神話』(ワレン・ファレル著、1993年)は、マスキュリズムの「教科書」として世界的なベストセラーになったが、日本では黙殺されている。「世の中は『男性が支配している』という言説は根強い。だから男性差別は女性差別の副作用としか語られない」と久米さんは不満顔だ。「実際には男が不利な理屈なのに、男が支配者なんておかしい」。
映画「レッドピル」
今年、アメリカの男性の権利運動を描いた映画「レッドピル」の自主上映会が東京と京都で開かれた。映画では「女は割を食っている」と考えてきた女性監督のキャシー・ジェイが、自分のフェミニストとしての信念に疑問を募らせて悩む場面が出てくる。いったいどこが男性不利の社会なのか。
「例えば日本でも男性の自殺者は女性の2・3倍、平均寿命は男性のほうが女性より6歳短い。ファレルはこういった男女差は、男性に不利に働く社会的要因があるからと問いかけました。日米とも100年前の平均寿命の差は1歳しかなく、状況は共通しています」(久米さん)。
現在、社会の様々な場面で女性枠の設置が争点になっている。「政治家やマスコミ、法曹など、社会的影響力のある領域で女性はアファーマティブアクションを求めてきました。しかし兵役、土木や建設の現場など危険な仕事は男性が担い、野宿者や自殺者の割合も男性が圧倒的です。アメリカでは大学・院での進学率はすでに女性が上回っていますが、それを『女性が優秀だから』と放置するのはご都合主義です」と女性からしか語られない男女平等の問題点を指摘する。「伝統的な性役割では、もともと男性差別も根付いていた。その中から女性差別だけが解消に向かった」というのだ。
フェミニズム vs 平等主義者
「日本ではフェミニズムは進歩的、保守派は男女平等を無視すると考えられていますが、アメリカでは平等主義者はフェミニズムを名乗らなくなってきています。平等主義者の一部である男性の権利運動の側からすれば、保守派もフェミニズムも同じグループに属していることになる」と新しい視点を提供する。
アメリカでも女性のDV被害の割合のほうが男性より高い。しかし全米2000のシェルターのうち男性が入れるシェルターはわずか1カ所。この不当な格差を映画で示したジェイ監督も、これを「男性差別」と認めざるをえなかった。日本でも、DVの被害は女性が3人に1人に対し男性は5人に1人。割合の差に比べて男性の入れるシェルターを公然と掲げているのは、日本家族再生センターだけだ。
男性が女性からの被害を訴えると「そのくらいひどいことしたんでしょう」と言われて無視されがちだ。「言われた男性はよけい傷つく。男女平等のためには、男性の被害の訴えにも真剣に耳を傾けていくべきです」(久米さん)。「男の泣き言」に平等に耳を傾けることは男女平等に近づくための第一歩だ。
(共同親権ニュースドットコム、2019年2月12日)
2月6日発売の週刊新潮に宗像充の男性差別についての記事が掲載されています。
https://www.fujisan.co.jp/product/1138/new/
雑誌に書ききれなかった男性に対する驚愕の差別の実態をレポートします。
「女は被害者/男は悪者」は本当?
「生活費16万でやっていけるわけない、ご飯も作れない」と高木彰さん(仮名、45歳)が、深夜に妻の彩子さん(仮名、41歳)に頭を叩かれたのは3年前のこと。金融の仕事に携わる彰さんに対して彩子さんは結婚を機に専業主婦となり、一人娘の優ちゃん(仮名)をもうけた。先の16万円は彩子さんへのお小遣いと一家の食費、彰さんはそれ以外の生活費を負担していたが、月の半ばには彩子さんが16万を使い果たし、家計は赤字に陥った。
女性が弱者で被害者、悪いのは男という固定観念は根強い。しかし高木さん夫婦の場合、「私の母親がオムツ代わりに使っていたナプキンを見て、『不貞の証拠』と言い放」ち攻撃を始めたのは彩子さんだ。逆上した彩子さんは、優ちゃんと1か月実家に滞在していたが、「優がパパとお風呂に入りたがっている」と突然帰宅。優ちゃんの面前で「不貞男」と罵った。
それ以外にも書斎のドアを蹴破り壊れた部分をハサミで突き刺す、首をネクタイで絞める、鍵穴を壊し書斎に入れなくする、彰さんの寝床にされたリビングのソファーに、「不貞男」と書き包丁で滅多刺しにする……娘がいてもお構いなしの暴力に彰さんは何度も警察を呼んだ。「すぐに逃げて下さい。このままだとたいへんなことになります」と警告する警官に彰さんは「娘を置いてはいけない。どんなに暴れても手を出しません」と踏みとどまった。彰さんは保健所、DVセンター、児童相談所と公的機関にはすべて相談した。しかし具体的なアドバイスは何もなかった。
そんな状態が1か月続いたころ、児童相談所から当時5歳の優ちゃんを保護したと連絡を受けた。「妻が性的虐待で通報していました。性器をスタートにして指で娘の身体をたどるゲームを私がしたというのです」。
彰さんに身に覚えがない上に、優ちゃんは「ママともやった」と児童相談所で述べていた。しかし「家庭裁判所は妻のDVは問わず、『性的虐待を女性である母親が行なうとは想定しがたい』と娘を妻に委ねました。性被害への過剰対応が悪用されたとしか考えられません」と彰さんは嘆息する。「男性シェルターがあれば逃げることができた」。娘との関係を断たれた彰さんは振り返る。
「女性にはある具体的な援助が男性にはない」
そう解説するのは、日本家族再生センター(京都)代表の味沢道明さん。1軒屋のセンターは男性も入れるシェルターを兼ね、記者が訪問したときには、妻からの暴力から逃れた大柄な男性が滞在していた。外出も自由だ。
「言葉の暴力は圧倒的に女性が加害者です。もともと力のない女性は対人スキルは男より高い。男は女に言葉で負ければ自我をパワーコントロールで安心させようとする。その結果暴力に至る」
味沢さんはDV発生のメカニズムを解説する。
脱暴力のグループワークでは男女が同じフロアでいっしょに問題解決を図る場合がある。「しかし女性の被害者保護のため、国はこれを禁じています」。男性を保護の対象から排除した場合にのみ、行政から助成金を得られるのだ。
男性が被害を訴えると・・・
では実際に男性が被害者として訴え出たらどうなるか。中村勇作さん(45歳、仮名・自営業)は、昨年の4月に妻の恵子さん(42歳、仮名)を静岡地方検察庁に告発した。その5カ月前、勇作さんは恵子さんに包丁で右腕を刺され、殴られて歯が折れ、顎の関節がずれてマウスピースの使用を強いられた。告訴が遅れたのは警察に被害を訴えても無視されたからだ。
恵子さんに刺された当日、勇作さんは意識を失い、その間恵子さんは2歳になる浩平ちゃん(仮名)を抱えて警察署に駆け込み、そのままシェルターに「保護」されている。殺されてもおかしくなかった勇作さんが意識を取り戻して警察に行くと、逆に加害者として扱われた。
「家裁の調停では、妻は私が息子を抱きかかえながら自分自身を刺したと主張していました。以前も私はレンガ片で殴られ骨折させられていて、妻が息子を見ている間に息子の顎に切り傷ができていたこともあります。その日も息子の怪我を妻に問いただし、豹変した妻の様子に、私が息子を守るため抱え上げたときに刺された」(勇作さん)。
刺された場面には目撃者もいたが、結局起訴はされなかった。その後、子どもと会う約束をして離婚は成立したが、勇作さんは浩平ちゃんと会えなくなっている。
上司に勧められてはじめて相談
「部下に怪我が絶えず早退をくり返し、様子がおかしいのに気づいた上司が促して相談が持ち込まれる」と語るのは「男の離婚相談」を掲げる五領田有信弁護士。「男性が過去1回女性に手を出した。そうすると妻に『会社に言う』『被害届を出す』と脅される。反抗できなくなり殴る蹴るの暴行を受ける。
「子どもがいなくて夫を殴っているケースはない。『やるべくしてやった』『家族を守るためだった』と警察や裁判所でも女性側は悪びれた様子は一切ない」(五領田さん)。
子どもは女性の最大の武器のようだ。
裁判所でも男性は悪者だ。「女性が被害を訴えた場合、『暴力があった』というだけで証拠はいらない。ところが男性の場合は録音がないと、怪我の写真だけでは信じてもらえない」という。実際親権の取得率は女性が8割を超え、引き離された父親が子どもと会える保障はない。
レシートを求めると経済的DV
上原哲也さん(40歳、仮名)も結婚3年目、専業主婦の妻の景さん(35歳、仮名)が1歳の息子を「誘拐」し、例によって離婚調停になった。景さんはDVを主張したが証拠はない。しかし裁判官は「DVがないことの証拠にならない」と哲也さんから息子を引き離した。「私が家計簿をつけていたので、妻に生活費が足りないと言われて『レシートを出して』と求めました。それを妻は経済的DVと主張しました」。
あまりの理不尽さに哲也さんはショックで失職。景さんがパートで働いていたため、今度は哲也さんが婚姻費用を請求した。裁判官は「男が請求するなんて聞いたことがない」と一蹴した。もちろん子どもとは引き離されている。
(共同親権ニュースドットコム 2019年2月7日)