2月20日投票、長崎県知事選挙で石木ダム建設問題が争点に浮上

保守分裂

 2月3日告示、2月20日投票の長崎県知事選挙では、現在無所属5人が立候補を表明している。これまで3期にわたって知事を務めた現職の中村法道氏(71)の出馬に対し、元厚生労働省技官の大石賢吾氏(39)も立候補を表明して保守が分裂した。

これに対し、千葉県から宮沢由彦氏(食品コンサルティング会社代表、54)が石木ダム建設に反対を表明し出馬。田中隆治氏(78)、寺田浩彦氏(60)の新人2氏も立候補を表明している。

今回の知事選で、佐世保市のハウステンボスでのIR誘致、諫早湾の潮受け堤防の開門問題、長崎新幹線の建設をめぐる佐賀県との対立などと並んで、争点として大きくなりつつあるのが川棚町の石木ダム建設問題だ。

石木ダムは、川棚町を流れる川棚川の支流石木川に計画中の総貯水量548万トン(東京ドーム4.4杯分)、総事業費538億円の多目的ダム。県営ダムとして1962年に計画が浮上した。

建設予定地の川原地区には、13世帯50人が現在も暮らしダム建設に反対し続けている。過去には機動隊を導入した強制測量に対し住民が実力で阻止したこともあった。2010年には付け替え道路の工事着手に対し、住民たちが現地で阻止。2019年には長崎県が13戸の住民の土地を強制収用。現在も建設中の付け替え道路予定地での座り込みが毎日続く。

川原地区2020年10月

石木ダム建設をめぐってつばぜり合いの討論会

 3日の告示を前に、1月30日に開催されたオンラインでの討論会「みんなで政策かたらナイト」(https://www.youtube.com/watch?v=LdsyZDxYNAE、長崎みんな総研が開催)では、現職の中村氏が、石木ダム建設反対の宮沢氏に対し、「長大河川のない長崎県では水の確保に苦労し一時長崎砂漠と呼ばれた。どうやって水を確保したらいいか」と口火を切った。

宮沢氏は「佐世保市の描く需要曲線は右肩上がりを描いている。これは人口が減っている佐世保市で本当に必要か。もともと針生工業団地建設計画のために作られた石木ダム建設計画ですが、その工業団地計画が破綻して、水の需要が減っている――」と回答。針生工業団地は現在、テーマパークのハウステンボスとなっている。「――例えば佐世保のサウナ、水をたくさん使うと思いますがこの30年水に対して危機感を持ったことがないというお話を聞いている。今の水需要の計画は非常に過大。それより、水が1日に6000トン、7000トンも漏れているのを直していったほうがいい」(宮沢氏)と答える一幕があった。

 一方宮沢氏は、「石木ダムの問題は長崎県を前に進めていくためにはのどに引っかかった骨。取り除かないとどんな県政の課題も前に進めない」と主張。「中村さんの出身地の島原市では法道さんはいい人と一様に言う。一方で石木ダムで座り込んでいる人たちがかわいそうだという話も聞く。どうしてその法道さんが将来に禍根を残す強制収用をしてしまったのか。また収容の後に強制代執行をしなかったのか。思いとどまったお気持ちを聞きたい」と、中村氏の在職中の強制代執行について、あらためて姿勢を問うた。

 これに対し中村氏は「住民生活の中で水の確保は非常に重要。他に安定的な水源がないような状況で石木ダムは必要不可欠。川棚川の治水機能を維持するためにも、この事業は進めていかなければならない。これまで半世紀近くの時間が経過しまして、歴代の知事も一生懸命取り組んできましたができれば私も地域の皆様のご理解をいただいた上で円満に事業が進められればと願っています。今後ともそういった方向で努力していきたい」と直接の回答を避けた。

長崎県は地元の理解を経て工事を進めるとの1972年の地元との合意を無視して手続きを進めた。また、長崎県との話し合いのために、現在進んでいる建設工事の中断を求めた地元の住民の要望に対し、中村氏は12年間の在職中応じていない。

候補者は石木ダム問題を解決できるか?

宮沢氏は「私が今回出馬のきっけかになった石木ダムでも、(地元の住民が)12年間も座り込みを続けている。これを放置して何が次の長崎の未来を作っていけるのか」とさらに言及。大石氏にも「こじれた石木ダムの問題をどう解決するのか」と水を向けた。

大石氏は「私も治水、利水の観点から(石木ダムは)必要。そういう意味では県政と同じ姿勢。まずはお話をさせていただきたい。宮沢さんも足を運ばれておられましたけども、私自身も足を運んでお話をして意思疎通をしたうえで理解を得たうえで実現したいと思っています。私がリーダーになりましたらそこをしっかりやっていきたい」

立候補を表明し川原地区を訪問した宮沢氏に対し、大石氏は中村氏同様、立候補を表明してから今日に至るまで、現地に足を運んでいない。

地元の住民とともに石木ダム問題に取り組む、石木川守り隊が実施した知事選立候補予定)者へのアンケート(http://ishikigawa.jp/blog/cat15/7939/)では、中村氏が記述で回答を寄せたものの、アンケートの設問には回答せず、大石氏と寺田氏は回答自体がなかった。宮沢氏と田中氏は設問の強制代執行に反対している。

筆者が1月18日から21日まで川原地区を取材した際、川原地区の住民と支援者は、付け替え道路の建設予定地で交代で座り込みを続けていた。筆者は2020年の10月にも取材で現地を訪問したが、住民たちはその時点で10年以上現地での行動を続けている。1年後の今回の訪問でも、同じ場所で座り込みを続けていた。本体工事の建設も見据えて座り込みの場所も増えている。

付け替え道路の建設予定地で座り込む住民たち

それ自体がニュースではないだろか。(2022.1.31)