陳情の出し方

 議会というのは、大勢では議論を集約するのがたいへんなので、代表者を選出して決めさせ、便宜的にそれがみんなの意見ということにするというつまんない組織だ。民主主義社会だから議会で決まったことには従わないと、とまじめな顔で言う人もいるが、議会は手段であって目的ではないのだから、悪法はきちんと破る、という心構えも民主主義のためには必要だということにもなる。だから、議会が使えそうなときは有効活用しよう。使えそうにない議会は変えればよいし、どうしようもない議員は、選挙で落とすなりしてきちんとやめさせよう。

 国立の市議会はよく国に意見書を出すことが多い。その場合、議員が自分たちで決議することもあるけれど、市民が陳情を出すことも少なくない。議会で議決されれば、それが市議会の意見ということになる。機運を作るのに役立つし、同じような地方議会の意見がたくさん上がって国政を動かすこともある。それにこれはあまり語られないけれど、議員に選択を突き付けて、賛否を明確にさせるという効果もある。こういった賛否を一覧表にして配ったりすると、投票の際の参考にもなるし議員への圧力にもなる。

議員質問、陳情・請願

 自分が持つ問題を議会に取り上げてもらう際、一番しやすいのは議員に質問してもらい、行政の見解を問うことだ。それであまりいい答えが得られないとしても、公の場面で問題が知られるし、何度も質問してもらうことで、いずれは解決しないとならない問題だと行政や他の議員に認識させることもできる。協力してくれる議員を見つけよう。

 陳情というのは、国立市の場合は市民が独自に出すもので、議員の紹介のあるものは請願と使い分けている。他の議会のことはあまり知らないのだけれど、出すなら請願にしろというところもあるようだし(国会とかはそうかもしれない)、いずれにせよ、こういうのがあまり嫌いじゃない議員に事前にやり方や、その議会の習わしを相談でればそれに越したことはない。

出すとき

 議会の始まる前数週間と締め切りが決まっている。議会事務局に聞けば教えてくれる。陳情(請願)項目のついた趣旨文を作って持っていく。議員は最終的には陳情項目に賛否を表明することになるので、文章は仲間と練った方がいいだろう。保守系の議員には、陳情そのものが出ることを嫌がる人もいるので、何かと陳情文はケチを付けられやすい。事実誤認や誤字があるからという理由で不採択にする議員もいる。議会事務局に文章を見せると事務局の人も念入りにチェックをする。資料があるなら人数分用意してくれと言われることもある。新聞記事とかわかりやすい資料を用意しておくといいだろう。いっしょに署名集めをして採択日までに集め、議員への圧力にすることもできる。

議員回り

 陳情を出しっぱなしということもありうるけれど、採択してほしいなら議員に趣旨を説明したほうが丁寧だ。電話して会派の代表者と会って説明することになる。議会が始まってから控室を回ることもできるけれど、最近は事務局を通せとうるさくなった。議員側もまったく知らない内容の場合は、議員が全員聞いてくれる会派もいるし、議会事務局から何度電話しても「今打ち合わせ中」と会おうとしない議員もいていろいろだ。

 味方になってくれそうな議員に、どこの誰から話した方がいいか事前に聞いておくとやりやすい。普通は大きい会派のほうから回らないと軽んじられたと思うのか、ケチを付けられたりしやすい。一方で与野党が拮抗していたりすると、中間派の議員から回ると有効なときもある。いずれにしても議員には難しい人が多い。議員に通りそうにないから取り下げたら、と言われることがある。泣き寝入りを強いる場合や、自分の支持者が割れていて意見表明したくないような場合などが考えられる。そういう議員は自分の仕事が何かわかってないと思ったほうがいいい。従う必要はない。

趣旨説明

 委員会で希望すれば趣旨説明の時間がある。議会事務局はなるべく短く、と言うけれど、必要なことであればきちんとしゃべったほうがいい。議員に質問されることもあるので質問は予想していたほうがいい。仲間に来てもらえれば心強いし、知り合いの議員にあらかじめ質問してもらうことを頼んでもいい。以前は市民の趣旨説明は休憩時間にされて議事録に残らなかったけれど、最近は違っているかもしれない。

採択・趣旨採択・継続審議・不採択

 国立市議会の場合、議員がそれぞれ意見表明して上記のどれかに手を上げ、過半数以上がなければ採択にならない。趣旨採択というのは、趣旨はいいけど……と議員が逃げを打てるあまりよくない制度だ。意見書の提出は全会一致じゃないとダメというところもある。不採択になって反省してもいいけど、わからんちんの議会が否決したと思えばそれだけのことだ。もともと少数派の市民運動なら大勢に影響はない。(宗像充、2016.2.14「並木道」144号)