共同親権で何が変わる?「子育て家庭倍増計画」


「結婚って一生おごり続けるってことでしょ」

 知り合いの母親がその気のなさそうな息子に結婚について聞くと、そんな答えが返ってきた。10年以上も前の話だが唖然とした。でもよく考えたら、実は結婚制度(男女の問題)と親権制度(親子の問題)が結びついた現行システムへの素直な返答だ。

ぼくは子どもと引き離され、離婚・離別などで同様の経験をした親たちの相談を2008年から受けてきた。2019年には現行の単独親権民法の違憲性を訴えて、立法不作為の国家賠償請求訴訟を提起した。共同親権の海外からの批判もあり、法務省は親権制度について法制審議会を開いた。現在パブリックコメントの最中だ(2月17日まで)。「離婚後」の親権制度の改革は一部の人の問題と思われがちだが、本当にそうか。

現在、結婚するときに夫の姓にする女性の割合は96%、離婚時に司法が女性を親権者にする割合は94%。男が女子どもを養う結婚は親権制度で強制されてきた。

一方、「働き方改革」で正社員は特権化した。結婚はぜいたく品に今やなり、妻が名乗る男の姓は称号だ。結婚相手に高収入を求める女性と不相応に結婚すれば、今度は結婚は苦行になる。

結婚に愛を求めるなら、自分の分は自分で稼いでその上で男女で子育てをするのが前提だ。育児を女性前提にしている現行の親権制度の改革は避けられない。

もともと与えられた性役割に夫が忠実なことが不仲の原因の一つだとしたら、「子育てをしたい」と離婚時に男性が主張することは歓迎すべきことだ。男女で子どもができるのだから共同親権は「導入する」ものではなくベースなのだ。男女の力関係の差がDVの原因なら、それを作り出しているのは性役割を強制する現行民法だ。

共同親権を回復することは親の関係を親子関係から分離し、男女がパートナーシップのあり方を選べるという側面以外に、子育て世帯が倍になるという効果がある。

「離婚は子どもにとって家が二つになること」なので、子どものための学用品もおもちゃも服も、すべてが倍になる経済効果は計り知れない。子どものお年玉ももちろん倍だ。父母が別々の場所にいれば子どもはそれぞれの地域が故郷だ。孫は祖父母の愛情も受け、地域は子どもを取り戻せ活性化する。他人の手を借りて子育てするのは避けられない。それが当たり前になれば婚姻中の夫婦の子育て環境も向上する。共同親権「子育て改革」で子育て予算倍増の投資効果は計り知れない。

もしこれをファンタジーと否定するなら、結婚は就職と諦めよう。(2022.2.5)